「告白」を読んで

歯科医師の信田です。
今月の読書感想文は湊かなえさんの告白という本についてです。
数年前に松たか子さん主演で映画化された本で、今さらながら読ませていただきました。
このお話は森口裕子というシングルマザーの中学校教師がある告白をするところから始まります。
自分が学校を辞める日のホームルームで、4歳の娘を殺したのは自分の生徒二人であることを告白するのです。
そして、その少年AとBが起こした事件の真相を話します。
教師として、生徒を守らなくてはいけない立場でもあるし、この国の法律では罰することができない。
けれども命の重さ、大切さを知って、自分の罪の重さを知り、それを背負って生きてほしいと訴え、自らがその二人を裁きます。

しかし裕子先生の告白の後から起きる少年Aに対するクラスメイトのによるいじめに対してはそんなことをする権利がそのクラスメイトにあるのだろうか?と疑問を抱きました。
そして少年Bの不登校に対しての親の態度には甘いなあと思いつつも、親にとってはかわいい子で守ってあげたい気持ちも理解でき、複雑な思いになりました。
この事件については少年A、B、そのクラスメイト、少年の母親のいろんな視点から語られています。
一つのものごとの捉え方でも時と場合、立場によって全然違います。
事件の報道一つにとっても偏った方向からでなくいろんな視点で見ていくことの大切さを感じましたし、私たちはついつい騒ぎたてるマスコミに振り回されているのかなという気もしました。
裕子先生の話の中で印象的だったのが「道を踏み外して、その後更生した人よりも、もともと道を踏み外すようなことをしなかった人がえらいに決まっています。
でも残念なことにそういう人には日常スポットが当てられません」という言葉です。
もちろん何かをして、賞をいただいたりすることはその人の努力の結果なので素晴らしいと思います。
でも目立ったり、華々しくスポットが当てられなくても、「毎日真面目に生活する」、当たり前のことでなんの価値もないように思われがちですが、それができることが十分幸せで、ありがたいことなんじゃないかなと思いました。
この本からは重いテーマも含め、たくさんのことをじっくり考える機会をいただけた気がします。
また皆様も機会があれば読んでみてくださいね。
歯科医師 信田麻耶